予測不可能な時代を生き抜く戦略

大は小を兼ねる。
では、小は大に劣るのか?

『「雑草という戦略」日本実業出版より』

動植物界を考えた時、恐竜がいた時代には動物も植物も大きくなることが必要だった。
恐竜に食べられないように植物が大きくなり、植物を食べるために恐竜が大きくなる。
そうして巨大化競争の道を進んで行った。
自然界は競争社会。
強いものが勝ち生き残り、弱いものが負け消えていく。
とにかく、巨大であることが強さの証だった。

ところが、やがてそんな時代が終わりを告げる。
恐竜時代の終わり頃になると植物の世界に、ある「イノベーション」が起きる。
それが今の時代も強く勢力を誇っている「草」。
草はほとんど巨大化せず、地面に近いところに生えるだけ。
「大きいことこそが良いことだ」という従来の価値観を完全に覆した。
まさに新しい時代が到来した。
私たちが草と呼ぶ草本植物は、巨大化した木が新しい時代に適応するための進化形。
地球の地殻変動によって大陸も分裂し、山脈が作られ、山脈によって風が雲となり、
雨を降らせるようになる。
こうして、気候も変動し不安定になっていったことで沢山の川ができ、
川によって出来た三角州により草が誕生したと考えられている。
新たな時代に誕生した三角州という環境はじつに不安定。
いつ大雨が降り、洪水が起こるかわからない。
川の流れは気まぐれ。
そんな環境では、ゆっくりと時間を掛けて大木になっている余裕はない。
そこで、短い時間で成長し種子を残して世代交代する「草」が発達していった。

「大きいことが良いことだ」と言われた時代から、
「スピードと変革の時代」へと移り変わって行った。

日本には「雑草魂」という言葉があり、「雑草軍団」という言葉もある。
エリート軍団と雑草軍団が試合をした場合、多くの日本人が雑草軍団を応援してしまう。
本来、雑草とはどちらかというと悪者扱いされるが、日本人は良い意味にも使ってしまう。
雑草は、逆境と変化をプラスに転じて強さに変えた。
日本は本来変化を好む国。
不安定さに価値を見出す国。
日本は島国で、国境を超えるような大きな戦乱もなく、革命もない。
しかし、日本の自然は不安定。
常に変化していく自然。
だからこそ、
「今」を大切に感じずにはいられない。

日本人は安定ではなく、変化する不安定さの中に価値を見出してきた。
それを仏教では、「諸行無常」と説く。
日本は天災国。
毎年のようにどこかで水害や地震被害がある。
だからこそ、大きな変化が起きた時、日本人は強さを発揮する。

逆境を力に変える。
変化を力に変える。

日本こそ、雑草に戦略を学ぶことの出来る国である。
踏まれたら立ち上がるよりも、雑草にとって大切なことは種子を残すこと。

日本には
1000年以上続く老舗が7社。
500年以上が39社。
300年以上が605社。
200年以上は
韓国0社、中国9社、インド3社。
に対し、日本は3000社!
世界に7000社あると言われる200年企業のうち、
半分近くが日本企業が占めている。

本来日本は、予測不能な変化を生き抜く力を世界で最も持っている国。
だからこそ、このコロナ禍でもうまく切り抜けられるはず。

予測不能な時代を生き抜くためにも、雑草戦略を活かしていきたいですね。


菊地 利行